学校法務Q&A

監事の役割

【Q】 私は、数年前から学校法人の監事をしています。
法改正により令和2年4月から監事の役割が一部変更されたと聞きましたが、どのように変わったのでしょうか。

【A】 監事の権限が従前よりも強化されました。
例えば、一定の場合の理事会招集権、理事の違法行為等の差止請求権などが定められました。
権限が強化されたのに伴い、監事の責任もより重くなっています。

【解説】

学校法人には監事を2名以上置くことが義務づけられています(私立学校法35条1項)。

監事の役割は、学校法人の業務と財産状況を監査して、学校法人の経営をチェックすることです。法律で定められている監事の業務は、学校法人の業務の監査、財産状況の監査、理事の業務執行状況の監査、監査報告書の作成及び提出、理事会への出席と意見陳述などです(私立学校法37条3項各号)。

近時、一部の学校法人において杜撰な経営や不祥事が相次いだことを受けて、学校法人における組織統治(ガバナンス)を強化する必要性が高まっていました。そこで、令和2年4月1日から施行されている改正私立学校法においては、監事の権限が従前よりも強化されました。

例えば、法改正前は理事会の招集は監事の職務には含まれていませんでしたが、法改正後は、学校法人の業務等に関して不正行為等を発見したときに、理事長に対し理事会の招集を請求することが監事の職務として追加されました(私立学校法37条3項6号)。さらに、監事による理事会の招集請求があった日から5日以内に理事会の招集通知が発せられない場合には、招集請求をした監事自らが理事会を招集できるようになりました(同条4項)。

また、今回の法改正により、監事は、理事の法令違反行為等によって学校法人に著しい損害が生ずるおそれがあるときには、当該理事に対しそのような行為の差止を請求することができるようになりました(私立学校法40条の5が準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律103条)。

以上のような権限強化を通じて、法令は、監事に対し、従前にもまして積極的なチェック機関としての役割を期待していると言えます。

このように監事の権限が強化された反面、その責任もより重くなっています。例えば、前述したとおり、今回の法改正で理事会招集権と理事の違法行為等の差止請求権が監事の権限に加えられましたが、これらは、いずれも単に権限を定めただけではなく、このような状態のときには、監事には、適切に権限を行使する「責務がある」と解釈されています。従って、権限を行使すべき状態があるにもかかわらず放置すれば、任務を怠ったとして監事自身も学校法人や第三者に対する損害賠償責任を問われる可能性があります。

以上のとおり、法改正によって監事の権限は強化され、責任もより重いものとなっていますので、監事の地位にある方及びこれから監事に就任される予定の方は、今まで以上に法律をよく理解しておくことが大切です。必要に応じて専門家から助言を受けておくことをお勧めします。

以上