雇用契約
【Q】 私立の学校法人なのですが、育児休暇を取得する教員がいるため、その代替要員として、1年間の限定で常勤教員を採用しようと考えています。通常の契約(無期契約)をしている教員の採用とは異なる点はありますか。
【A】 有期労働契約では、当該教員が更新を希望したにもかかわらず学校側が契約更新の拒否をする(いわゆる「雇止め」)というトラブルが想定されます。この雇止めには、法令上の制限があることに留意すべきです。雇止めトラブルのリスクを減少させるために、更新を可能とした場合でも更新回数等に上限を設ける等の事前の対応策を実施しておくことが重要となるでしょう。また、いわゆる無期転換ルールについても注意が必要です。
【解説】
1 有期労働契約に関する規制について
有期労働契約の締結をする際には、更新の有無を雇用契約書または労働条件通知書等に明示しなければなりませんし、更新可能とする場合には更新の判断基準を明示しなければなりません。また、雇止めの予告義務、雇止めの理由の明示義務、契約期間への配慮についての努力義務といったルールも存在します(労働基準法14条2項,有期労働契約の締結,更新及び雇止めに関する基準)。
もっとも、たんにこれらの法令上の規制を遵守するだけでは、以下で述べる雇止めトラブルの予防策としては不十分です。
2 雇止めの制限について
⑴ 無期労働契約ではなく有期労働契約を締結すれば、期間満了により契約が終了し、それ以降の契約については再度学校側と当該教員とで契約更新に合意するか否かの問題であると考えておられるかもしれません。しかしながら、これでは労使のバランスを欠くおそれがあることから、有期労働契約者における使用者側からの雇止めについての制限が法令上規定されています(労働契約法19条)。
⑵ 具体的には、①ⅰ労働契約が反復して更新されて雇止めが解雇と社会通念上同視できる場合またはⅱ当該労働者の更新の期待に合理的な理由がある場合に、②ⅰ契約期間満了までに更新の申込みまたはⅱ満了後遅滞なく契約締結の申込みをし、③使用者が当該申込みを拒絶することがⅰ客観的に合理的な理由を欠きⅱ社会通念上相当であると認められない場合、学校側は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされ、当該教員との有期労働契約が存続する結果となります。
⑶ このように、雇止めについては、無期労働契約の解雇の場合と類似する厳しい要件が設けられています。そこで、雇止めトラブルに対する予防的措置を講じることが重要となります。たとえば、更新を可能とする場合には、予め更新期間や回数の上限を明示しておくことや、更新時の更新手続を適切に行い、実態として例外事例を作らない運用をしていくこと等が挙げられるでしょう。
3 いわゆる無期転換ルールについて
有期労働契約であっても、①同一の使用者との2つ以上の有期労働契約の②通算契約期間が5年を超えた場合に③無期労働契約締結の申込みがなされると、無期労働契約に転換されるといういわゆる無期転換ルール(労働契約法18条)の適用にも注意して下さい。
以上