学校法務Q&A

配置転換・休職・解雇などについて

【Q】 私立の学校法人なのですが、当法人設置の高校で勤務している数学教諭について、高校として決定したカリキュラムを無視した講義を継続して実施したり、歯に衣着せぬ物言いが災いして担任を務めるクラスの学生や保護者と揉め事を起こす等、学生や保護者から多くのクレームが来ている状況です。解決策として、クラス担任と講義担当から外して事務局職員へと配置を変えたいのですが、法律的な問題点はあるでしょうか。

【A】 従業員である教諭について、いわゆる配転(配置転換)命令を出すことをお考えのようですが,法的な問題点として、まず、使用者に配転命令権があるかどうかの確認が必要です。また、配転命令権があるとしても無制限に配転が許されるわけではなく、職種や勤務地の限定合意がある場合や、使用者の配転命令が権利濫用に当たる場合には、配転命令をなしえないことに注意して下さい。なお、当該教諭への指導、面談や自宅待機を経て休職等他の方策を検討することも考えられます。

【解説】

1 配転について

 配転(配置転換)とは、使用者の命令によって労働者の職務内容や勤務場所を相当の長期間にわたり変更することです。配転命令は、就業規則や雇用契約書等により配転する権利が認められている場合に行うことができます。もっとも、配転命令に根拠があるとしても、以下に述べるとおり、無制約に行使しうるわけではありません。

2 配転命令の制約

⑴ 職種及び勤務地限定の合意がある場合

 労働契約締結のタイミング等に労働者との間でこのような合意をした場合、当該労働者の同意なしに配転命令をすることはできません。

⑵ 権利濫用に当たる場合

 配転命令が権利濫用に当たらず有効となるかの考慮要素として、

①使用者側にとって業務上の必要性が存すること
②他の不当な動機・目的をもってなされたといった事情がないこと
③労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益がないこと

が挙げられます(東亜ペイント事件:最判昭和61・7・14)。

②の具体例は、当該労働者を配転させることで退職させたいといった目的が挙げられます。

③の具体例としては、通勤時間増加や単身赴任による負担といった事情では足りず、要介護家族がいるにもかかわらず遠隔地へ配転させる等の特殊な事情による労働者の私生活上の不利益がこれに当たります。使用者側としては、労働者に対し、配転の具体的内容や条件の説明の手続を踏むことはもちろん、不利益を緩和する措置の実施等も重要となってくるでしょう。

3 解雇との関係

 業務指示の一つである有効な配転命令を拒否した労働者に対してなした解雇は、これもまた有効となる場合が多いと思われます。しかしながら、裁判例上、有効な配転命令後の解雇であっても、解雇に至るまでの経緯等によっては、その有効性が認められない場合があります。

 配転命令が有効であったとしても、拙速な対応は避け、説明や交渉の機会を十分に確保した上で解雇に踏み切ることが望ましいでしょう。

4 休職・自宅待機について

⑴ 自宅待機

 本件のように労働者の業務上の言動が問題となっている場合、実務上、懲戒処分にする前段階として、非違行為の事実調査の期間中、当該労働者を自宅待機とする場合があります。自宅待機は、人事権の行使として就業規則上の根拠は不要ですが、業務命令ですので有給が原則です。

⑵ 休職(出勤停止)

 労働者の当該言動が懲戒事由に該当する場合、懲戒処分としての休職として出勤停止(停職)処分がなされることがあります。出勤停止期間中は、賃金が支給されず、勤続年数への参入もされないのが通常です。また、出勤停止は、1が月程度とされることが多いですが、ケースにより数か月に及ぶこともあります。なお、懲戒事由と懲戒処分は、いずれも就業規則に定めが必要です。

以上