学校法務Q&A

定年後再雇用について(高齢者雇用確保措置等)

【Q】 私学の学校法人なのですが、就業規則で60歳定年を定めているところ、来年以降複数の該当者が出る予定です。退職手続に当たり、法的に気を付けるべきポイントはありますか。

【A】 65歳未満の定年制を導入している場合、①定年引上げ,②継続雇用制度,③定年の定めの廃止,のいずれかの措置をとることが義務付けられています。実際の導入例が多い②継続雇用制度は希望者全員が対象になることに注意してください。さらに、70歳までの就業確保措置を講じることが努力義務となります。

【解説】

1 65歳までの「高齢者雇用確保措置」の義務

⑴ 法律上、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、定年年齢を65歳未満としている事業主に、高年齢者雇用確保措置として、①定年引上げ、②継続雇用制度、③定年の定めの廃止のうち、いずれかの実施が義務付けられています(高年齢者雇用安定法〔以下「法」といいます。〕第9条)。実務上は②の導入をもって対処することが大多数の状況です。

⑵ 適切な高齢者雇用確保の措置が講じられていない場合、公共職業安定所を通じて実態が調査され、必要に応じて、助言、指導、勧告(法第10条2項)や学校事業者名の公表(同3項)の対象となります。

2 定年後の継続雇用制度について

⑴ 継続雇用制度とは、現在、雇用している高年齢者を本人の希望によって定年後も引き続き雇用する制度で、再雇用制度等がこれに当たります。この制度を導入する場合、定年後も働きたいと希望する者全員を対象にしなければなりません。

⑵ 継続後の雇用条件については、原則として、法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができます。

 具体的にどのような雇用条件が法律上認められるかは、高齢者の安定した雇用を確保するという法の趣旨にかんがみて、個別の事情に応じて具体的に判断されることとなるでしょう。たとえば、1年ごとに雇用契約を更新する形態については、65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと及び65歳までは原則として契約が更新されることが必要となると思われます。

⑶ なお、継続雇用制度の適用については、経過措置が設けられており、平成25年3月31日までに、労 使協定により、継続雇用制度の対象となる高齢者に係る基準を定めてこれを導入していたときは、その基準に沿って継続雇用することができます。ただし、かかる基準が適用できる継続雇用対象者の年齢については、段階的に引き上げる必要があります。

3 70歳までの「高齢者就業確保措置」について

 上記雇用確保措置のうち①定年を65歳以上70歳未満に定めている場合、②65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している場合には、ⅰ)70歳までの定年引上げ、ⅱ)定年制の廃止、ⅲ)70歳までの継続雇用制度の導入、ⅳ)創業支援措置等の導入、のいずれかの措置を講じる努力義務があります(法第10条の2)。

 なお、この規制は、高齢者雇用確保措置と異なり努力義務にとどまることから、関係法令の趣旨に反しない限り基準を設けて対象者を限定することも可能と思われます。

以上