学校法務Q&A

入学・休学・停学・退学など

(1)入学に関する問題について

(学納金の不返還特約に関する問題)

【Q】 入学辞退者から学納金(入学金、授業料など)の返還請求を受けました。当校では、いったん納付した学納金は返還しない旨の決まりとなっており、これは入学願書等にも記載しています。この返還請求に応じなければならないのでしょうか。

【A】 入学金については、特段の事情(不相当に入学金が高額である当の事情)がない限り、返還する必要はないでしょう。ただし、授業料については、3月31日までに、入学辞退の意思が示された場合には、返還しなければなりません。

【解説】

入学金、授業料等の支払い義務の根拠は、学校と入学予定者との間の契約(在学契約)にあります。そして、在学中の「学納金の不返還特約」というのは、在学契約が解除された場合の、損害賠償額の予定あるいは違約金の定め、という性質を有するものです。

ところで、在学契約も学校という事業者と学生等(親権者含む)という個人との間の契約であることから、消費者契約であり消費者契約法の適用を受けます。消費者契約法9条1号においては、「平均的な損害」を超える損害賠償義務や違約金を定めた契約条項は無効となるとされております。

今回の問題は在学契約上の「学納金の不返還特約」がこの消費者契約法の条項に反し無効となるか、という問題です。この点について裁判所は次のように判断しました(最高裁平成28年11月27日判決)。

まず、「入学金」については入学予定者が当該学校に「入学する地位を取得するための対価」と評価できるので、学校は返還義務を負わない。

次に「授業料等」ですが、入学辞退(在学契約の解除)のタイミングにより返還義務を負う場合と負わない場合があると判断しました。入学辞退のタイミングが3月31日より以前であった場合、学校側としては、入学予定者が入学辞退することも予測される状況なので、入学を前提とした授業料までとるのは、やりすぎだろうという判断をしました。すなわち「授業料等」については学校側が被る「平均的損害」を超えるもので、その部分についての「学納金の不返還特約」は無効だとしたのです。4月1日以降の在学契約の解除については、この時点ではもはやすでに新学期が始まっていることから、「初年度に納付すべき範囲内」の授業料については、学校側が被る「平均的損害」の範囲内であると判断しました。したがって、その部分において「学納金の不返還特約」は有効であるので、学校側が返還義務を負いません。

(2)休学に関する問題について

【Q】 休学した場合について、休学期間中の授業料等は返還する必要はあるのでしょうか。

【A】 学期途中に休学したのであれば、その学期の授業料等は返還する必要はないでしょう。ただし、学期が始まる前に休学した場合については、その学期の授業料等を返還する必要がある可能性はあります。

【解説】

授業料等の発生根拠は、在学契約にあり、在学契約に消費者契約法が適用されることは前に説明したとおりです(第3 1(1)参照)。

裁判所の考え方に従えば、新学期が始まる前に休学の申し出があった場合は、学校側は学生が休学することにつき対応がとれるので、休学中の授業料までとるのはやりすぎでしょう、となり、学期途中の休学であれば、すでに休学者分も学校側は授業などの準備をしているので、授業料等をとってもいいでしょう、となると思われます。

(3)停学・退学について

「停学」とは、学校側が、学生等の地位を一時的に停止する懲戒処分です。学生としての地位が停止されるので、授業への出席もできなくなります。

「退学」とは、学生等の地位を学校側がはく奪する懲戒処分です。

これらは、学生の校則違反等の非違行為に対する罰として行われる処分です。学校教育法や学校教育法施行規則にその定めがあります。

注意すべきは、学校により、できる処分が異なることです。

「停学」については大学生、高校生に対して行うことができますが、国公立、私立を問わず、小中学生に対して行うことはできません。

「退学」については国立学校、私立学校では行うことができますが、公立の小中学校では行うことができません。

「停学」「退学」の実施検討については、これらの点に十分留意してください。

参照条文

学校教育法施行規則

第二十六条 校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当つては、児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。

2 懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(大学にあつては、学長の委任を受けた学部長を含む。)が行う。

3 前項の退学は、公立の小学校、中学校(学校教育法第七十一条の規定により高等学校における教育と一貫した教育を施すもの(以下「併設型中学校」という。)を除く。)、義務教育学校又は特別支援学校に在学する学齢児童又は学齢生徒を除き、次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。

 一 性行不良で改善の見込がないと認められる者

 二 学力劣等で成業の見込がないと認められる者

 三 正当の理由がなくて出席常でない者

 四 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者

4 第二項の停学は、学齢児童又は学齢生徒に対しては、行うことができない。

5 学長は、学生に対する第二項の退学、停学及び訓告の処分の手続を定めなければならない

学校教育法

第三十五条 市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し行う等性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。

一 他の児童に傷害、心身の苦痛又は財産上の損失を与える行為

二 職員に傷害又は心身の苦痛を与える行為

三 施設又は設備を損壊する行為

四 授業その他の教育活動の実施を妨げる行為