身元保証人
【Q】 私は甲学校法人の職員で総務部に所属しています。甲学校法人では、入学時に学生には「誓約書」を提出してもらい、保護者には「保証書」を提出してもらってます。この「誓約書」や「保証書」は、最近10年くらいは同じ文面を使用しています。ところが、最近、私の友人で乙学校法人に総務部で働いている友人と話していたところ、法律の改正があって、それに対応するように「保証書」を修正しておかないと、法的に効力がないものとなってしまうと聞き、大変驚いています。本当にそんなことがあるのでしょうか。
【A】 令和2年4月1日から施行された改正民法によって、個人が保証人となる根保証契約(一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証)においては、極度額(保証人が責任を負う限度額)を明記しておく必要があり、極度額の定めがないと契約自体が無効とされました(民法465条の2)。「保証書」の提出により成立する、学校法人と保護者との契約も、この根保証契約に該当しますので、極度額の定めがないと無効となり、法的に見ると保護者が授業料等の校納金を支払う義務を負っていないということになりかねません。
学校設置者である学校法人と学生等との間の在学契約に基づいて、学校法人は、学生等に対して教育サービスを提供し施設を利用させるなどの義務を負い、学生等は、学校法人に対して、学則等を遵守する義務を負うとともに、授業料等の校納金を支払う義務を負います。
学生の入学時に、学生等とともに保護者が署名・捺印をする書面において、学生等が支払うべき授業料等の校納金支払債務について保護者が連帯保証をする条項が盛り込まれており、この書面による約束によって保護者が連帯保証人として支払義務を負うことになります。
そして、学生等が支払うべき授業料等は毎年、或いは、前期・後期といった半年ごとに発生したり、実習にかかる実費など入学時点では金額が不確定なものや、学生等が学校の設備や備品を壊したことによって発生する損害賠償債務なども保証の範囲に含まれているという場合には、入学時に確定している特定の債務を保証しているとはいえず、根保証(一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証)に該当します。
従って、令和2年4月1日施行の改正民法の適用により、極度額(保証人が責任を負う限度額)が記載されていないと、保証契約自体が無効とされてしまいます。例えば、「連帯保証人は、本人の貴学に対する在学中の学納金及び寮費、その他一切の債務の履行について、連帯保証し、支払いを約束します。」というような記載のみで、極度額の定めのない「保証書」では法的効力が認められないのです。令和2年4月1日以降も、このような「保証書」を保護者に提出してもらっている場合、文面を精査し変更して、変更後の「保証書」を保護者に提出し直してもらう必要があるでしょう。
このように改正民法が、極度額の定めがない根保証契約を無効とした趣旨は、特定の債務の保証に比べて根保証契約の場合、保証人が保証契約をする時点で自己が負うことになる責任の範囲を把握することが難しく、予想外の重い責任を負い苛酷な結果になることを避けるためですので、極度額の定めは、保護者にできるだけわかり易いように確定金額で明記するのが良いでしょう。