学校法務Q&A

各種の契約

【Q】 私は、学校法人の総務部の職員です。学校法人では、かなり多岐にわたる多種多様な契約書を取り交わしているのですが、当校には「法務部」という組織もなく、契約書を取り交わす前に、法的な側面からのリスク等の検討は十分になされていないというのが正直なところです。特に以前から取引のある相手方との契約書は、「前のものと大体同じだから」ということで、ひとつひとつの条項を逐一確認・検討をすることもないまま契約書に捺印がされているように思います。このようなことで大丈夫なのでしょうか。

【A】 学校法人は多種多様な契約関係のうえに運営されています。例えば、学校の校舎を建て替えるときには建物建築請負契約、スクールバスの運行をするにはバス会社等とのバス運行に関する業務委託契約、学校内の食堂を食堂業者に委託するとすれば業務委託契約、学生のためにパソコンを大量に購入する場合には動産売買契約、当該学校のための学習システムを独自に作ってもらうとなるとコンピューターシステムの開発委託契約、学校のホームページを制作してもらう場合は業務委託契約、パンフレットを印刷してもらう業務委託契約、教師や職員との間では雇用契約、学生との間では在学契約、保護者との間では連帯保証契約、学生の身元保証人との間では身元保証契約、修学旅行について旅行会社との間で旅行に関する業務委託契約、その他、清掃や植栽の剪定、自動販売機を設置するにも契約書は取り交わすはずですし、大掛かりなものでは、学校法人を合併する際の合併契約や学部の事業譲渡契約などもあり得ます。

このように考えると、学校法人は、相当な規模の企業に匹敵する多岐にわたる複雑な契約関係を各取引相手と結び、それらの契約の権利の行使、義務の履行という法的関係の真っただ中にあると言っても過言ではありません。

しかし、ある程度の規模の企業であれば、会社に「法務部」が存在し、会社が締結する契約書については、事前に弁護士による法的な検討を経ていることがほとんどであるのに、学校法人には「法務部」は存在せず、契約書の弁護士によるリーガルチェックも必ずしも十分には行されていないのが現状ではないでしょうか。

学校法人においても、一般企業と同様に、必要な権利行使が可能となっているか、契約上のリスクを可能な限り排除したか、弁護士による各種契約書のリーガルチェックは非常に重要な意味を持ちます。近時は、民法や労働関係法を含む重要な法改正も相次いでおり、「前のものと大体同じだから」で契約書に捺印してしまうようでは、取り返しのつかないような契約上の大きなリスクを負うことになりかねないことはおわかりいただけると思います。