学校法務Q&A

契約書における知的財産権に関する合意

【Q】学校の図書館の入退館と貸し出し状況の管理をスマートフォンで行うための新しいシステムを外部業者に発注することになりました。外部業者が提示してきたシステム開発委託契約書のドラフトでは、開発されたソフトウェアの著作権が外部業者に帰属することになっています。開発費を負担するのは当校なのに、権利を取得できないのでしょうか。

【A】システム開発業務を委託した場合の成果物の著作権は、原則として受託業者に帰属しますが、契約の定めによって、発注者に移転させることもできます。

【解説】

著作権は、著作物を創作した者に原始的に帰属します(著作権法17条)。従って、業務委託に基づき開発されたソフトウェアの著作権も、原始的には、それを創作した受託会社に帰属します。開発費を負担したという理由だけで、当然に発注者に著作権が帰属するわけではありません。

もっとも、契約の定めによって発注者に著作権を移転させることは可能です。発注者としては、将来ソフトウェアの改変等を自由に行うため著作権の移転を受けておきたいという意向があります。他方で、受託会社としては、将来別の案件にソフトウェアの一部を再利用できるように著作権を留保しておきたいという意向が働きます。

そこで、双方の利益に配慮した折衷的な合意として、著作権を受託会社に帰属させた上で、成果物であるソフトウェアについて発注者が自由に改変等を行う権利の許諾(ライセンス)を受けたり、あるいは、汎用的な利用が可能なプログラムの著作権だけは受託会社に留保されるが、それ以外の著作権は全て発注者に移転すると定めることもできます。

本件においても、もし学校側が、納品されたソフトウェアの改変等を将来行う見込みが全くなく、単に納品されたものをそのまま使い続けるだけで構わないのであれば、提示された契約書のドラフト通りに著作権を受託会社に留保させても支障はないでしょう。もし改変等の余地を残しておきたいのであれば、受託会社と交渉して妥協点を探る必要があります。著作権の帰属は、受託会社にとっても重要な問題ですから、業務委託料等の契約条件に影響する可能性もあるでしょう。

以上