学校法務Q&A

授業における著作物の利用

【Q】私は学校法人が運営する私立中学校の国語教員です。来年度の授業で、生徒たちにある小説の一部をコピーして配布しそれを読んでもらっていろいろ考えてもらう授業を行おうと計画しているのですが、当該小説の作者である小説家の著作権との関係で問題はないでしょうか。

 また、授業当日に小説の一部のコピーを配布するのではなく、当該小説の一部を含む教材の内容を電子ファイル化してクラウドサーバーにアップロードしておいて、生徒たちにパソコンからアクセスさせて、その教材を授業で利用することについても同様に考えて良いのでしょうか。

【A】次のように理解すると良いでしょう。

 まず、前段の質問である、授業において題材とする小説の一部のコピーを資料として配布することについては、教育機関において教員等が授業の過程において利用することを目的として、それに必要な限度で、公表された著作物を複製することについては著作権法第35条1項本文で是認されていますので、著作権者の許諾を得ることなく・無償で行うことができます。但し、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は除外されており(同条項但書)、例えば、授業の都度、小説の一部をコピーして配布し学期末には当該小説の大部分のコピーを配布することとなってしまうような場合には、著作権者の許諾なしにおこなうことはできないものと考えられます。

 次に、後段の質問である、授業で利用する教材(小説の一部のコピーを含む)の外部サーバー経由での送信については、著作権者の許諾を得ることなく行うことはできますが、「公衆送信」の一種として、著作権法第35条1項・2項により、著作権者の許諾を得ることなく行うことは可能であるものの、「相当な額の補償金」を著作権者に支払わなければならないものとされ、具体的には、当該公衆送信を行う教育機関の設置者が、文化庁長官の指定する唯一の指定管理団体である(一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会)(略称SARTRAS サートラス)に対して、文化庁長官が認可した補償金額を支払わなければなりません。なお、「公衆送信」についても、例えば、当該小説の大部分を電子ファイル化してサーバーにアップロードして生徒にアクセス可能にするなど、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は除外されており(著作権法第35条1項但書)、著作権者の許諾なしに行うことができないことは前段の場合と同様です。                                 以上