学校法務Q&A

校則について~染髪等禁止の校則に基づく生活指導は有効か~

【Q】当学校には、生徒の染髪等を禁止する校則があります。しかし、生徒Xは茶髪に染めてきて、教員からの度重なる頭髪指導にも関わらず、一向にこれを改めませんでした。そこで、他の生徒への影響もあることから、別室指導(教室等で他の生徒とともに学習指導等を行うのではなく、対象の生徒と指導担当教員のみを別室で同席させ、学習指導及び生徒指導等を行う指導方法)を検討しておりますが、違法とはならないでしょうか。

【A】染髪等禁止の校則があり、これに基づく度重なる頭髪指導にも関わらず、生徒Xが全く頭髪を改めようしない場合には、やむを得ない指導として、別室指導は違法とはならないでしょう。

【解説】

  校則は、学校が教育目的を実現していく過程において、生徒が遵守すべき学習上、生活上の規律として定められるものです。

  校則は、生徒の行動等に一定の制限を課すものですので、学校が教育目的を達成するために必要かつ合理的範囲内において制定することができます。そして、校則を制定する権限は学校長にあるとされています。校則の制定にあたっては、学校の専門的、技術的な判断が必要となるため、広い裁量があるものと考えられています。

  したがって、校則の適法性については、教育目的に基づくものか、同目的達成のため社会通念上合理性があるかといった観点から、校則制定に関する学校の裁量の逸脱、濫用があるかという視点で判断されます。また、教員による個別の生徒指導についても、指導の目的や態様等の諸事情を勘案し、教員の生徒に対する教育的指導の範囲を逸脱しているかという視点で判断されます。

  この考えによれば、染髪等禁止の校則は、生徒の関心を学習等に向けて非行を防止する目的の規定であり、社会通念上合理的な規制であり、裁量の逸脱濫用とならないと思われます。また、別室指導についても、学校は生徒Xに対して繰り返し頭髪指導をしたにも関わらず、生徒Xは一向に改めなかったという事情にかんがみれば、教育的指導の範囲を超える不合理な指導方法とまでは言えないでしょう。

  もっとも、多様化する現代において、染髪等禁止の校則がいつまでも適法かについては議論のあるところだと思います。  

                                            以上

                                   (2022.6.10)