課外活動中の事故の責任について
【Q】テニス部の所属していた生徒が、クラブ活動中に熱中症で倒れ、重篤な障害を負ってしまいました。そして、生徒から、学校側へ損害賠償請求がなされました。このような場合、学校側は責任を負うのでしょうか。
【A】クラブ活動の顧問らが,各生徒の健康状態に支障を来す具体的な危険性が生じないよう指示、指導することを怠っていた場合、学校が責任を負うことになるでしょう。
【解説】
公立学校の教育活動に伴う事故については,国家賠償法1条の「公権力」に学校教育活動も含まれるものと解されるので,同法1条の適用が認められます。したがって、この場合、国に責任追及をすることになります。私立学校であれば、当該学校の運営主体である学校法人等に責任追及をすることになります。
課外のクラブ活動であっても,それが学校の教育活動の一環として行われるものである以上,その実施について,顧問の教員には,生徒を指導監督し,事故の発生を防止すべき一般的な注意義務があります。顧問の教員が練習メニュー,練習時間等を各部員生徒に指示しており,各部員生徒が習慣的にその指示に忠実に従い,練習を実施しているような場合には,顧問の教員としては,練習メニュー,練習時間等を指示・指導するに当たり,各部員生徒の健康状態に支障を来す具体的な危険性が生じないよう指示・指導すべき義務があります。
危険が生じないよう指示、指導する義務を顧問の教員が怠れば、教員の義務違反行為として、それによって発生した損害について学校側は責任を負うことになります。
学校教育,とりわけスポーツにおける熱中症の危険性については,すでに広く周知されているところですので、夏の暑い日中に日陰もないような外で長時間に渡ってクラブ活動をさせることはそれ自体熱中症を生ぜしめる危険な行為といえるでしょう。それを顧問の教員が指示していたということであれば、熱中症の危険を生ぜしめないようにすべき義務を怠ったといえ、熱中症によって生じた損害に関し、学校側の賠償責任は免れないでしょう。
夏の暑い時期の課外活動は十分に生徒の健康に配慮して行わせることが学校側には求められます。
以上
(2022.7.20)