業務委託契約書(学生食堂の業務委託)
【Q】私は、学校法人の総務部の職員です。当法人の大学の学生食堂の業務を委託していた業者が変更となることが決まり、新しい業者と学生食堂の業務委託に関する契約書を取り交わすことになりました。私がこの契約交渉の窓口となるように上司から指示されたのですが、契約締結に向けて相手方の業者と交渉を進めるにあたって、どのようなことに気を付ける必要がありますか。
【A】このような業務委託契約において留意すべきこととしては、①委託する業務の内容・範囲等をできるだけ具体的に確定すること、②報酬の金額や支払条件等を明記すること、③委託業務の遂行状況について受託者に定期的な報告の義務を課し委託者側が監督や指示・検査の権限を持つこと、④再委託の可否・可能とする場合の条件、⑤契約の更新に関する規定などがあります。このほか、本件契約は、学生食堂の業務委託であることから、設備の利用や経費の負担に関する取り決めや、衛生管理のための遵守事項なども明記しておくと良いでしょう。
【解説】
≪委託業務の内容・範囲≫
例えば、大学に学生食堂が複数ある場合など、どこの食堂で食事を提供するのか。食堂を営業する曜日・時間帯。何種類の飲食物を提供するのか。飲食物を提供するだけでなく、献立表等の作成・掲示や食券の発行などその他の業務も委託するのであれば明記する必要があります。
≪報酬の金額・支払条件≫
通常通りの曜日・時間で営業を行った場合の報酬金額。臨時休業や臨時の追加営業などがあった場合の報酬の加算・減算の取り決め。支払の時期や方法について定めておく必要があります。
≪業務遂行状況についての業者の報告義務・学校側の権限≫
受託者(食堂業者)の業務遂行について任せっきりで何も知らされない何も意見を言えないということでは、学生が快適に利用できる食堂とならないリスクがありますので、業務の遂行状況について受託者から学校に定期的に(毎月)報告書を提出させたり、利用する学生から、提供される飲食物の内容や従業員の態度、衛生管理状況等についてクレームがあった場合等には、委託者である学校側が検査や指示できる権限を保持していた方が良いと思います。仮に食中毒等の事案が発生した場合、衛生管理状況についてのクレームを放置して学校が何ら是正を求めていなかったということだと、学校が学生に対する安全配慮義務を怠ったとして責任を問われる可能性もあります。
≪再委託の可否・条件≫
契約の当事者である当該食堂業者であれば多くの実績があるので大丈夫と考えていたら、実際には、学校側が知らないところで、食堂の業務が実績のない劣悪な事業者に再委託されていたということでは困るので、再委託は原則的に禁止とし、学校が事前に書面で承諾した場合にだけ例外的に認めることとし、かつ、もし再委託された業者が何か問題を起こした場合には、契約の当事者である食堂業者も全面的に連帯責任を負う旨の条項を設けておくと良いでしょう。
≪契約の更新≫
例えば、契約のもともとの契約期間は3年で、契約期間満了の3ヵ月前までに契約当事者のいずれからも更新拒絶の意思表示がなされない限り、本契約は自動的に1年間延長され、その後も同様とするというような条項が多く見受けられます。
ただ、更新拒絶の意思表示が、口頭や電話などで伝えられると不明確となり、更新の有無について紛争を誘発しかねませんので、「書面による更新拒絶の意思表示」を条件とすると良いでしょう。
また、上記の例で、契約期間満了の3ヵ月前に食堂業者側から更新拒絶の意思表示がなされたという場合、学校としては、3ヵ月以内に新しく引き受けてくれる食堂事業者を探して、条件交渉をし、契約書を取り交わしたうえで、その業者に業務を開始してもらう必要があります。これが間に合わないと、学生食堂が休業となる期間が生じてしまうリスクがあります。もし、3ヵ月では新しい業者に依頼をして業務を開始してもらうのに期間が足りないということであれば、この「3ヵ月」という期間をもう少し長めに設定しておく必要があるでしょう。 (2022.9.5)