学校法務Q&A

学校の広告と景品表示法

【Q】 専門学校を運営する学校法人の総務部に勤務しています。この度、生徒募集の広告を出すことになり、私が原稿作成の担当者になりました。上司からは、多数の生徒が集まるようにできるだけ目を引く表現を使って欲しいと言われています。広告の表示について何か注意すべきことはありますか。

【A】 景品表示法の表示規制に違反しないように注意する必要があります。まず、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「おとり広告」の意味を正しく理解してください。

【解説】 不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)は、消費者に誤認される不当な表示を事業者が行うことを禁止しています。具体的には、景品表示法第5条1号から3号が、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「指定公告に該当する表示」を禁止しています。学校法人であっても収益事業(私立学校法第26条)を行う場合及び一般の事業者の私的な経済活動に類似する事業を行う場合には、事業者として景品表示法の適用を受けますから(消費者庁の「景品類等の指定の告示の運用基準について」)、注意が必要です。以下、具体例を挙げながら説明していきます。

 「優良誤認表示」(同法第5条1号)は、商品やサービスの内容を実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者の商品やサービスよりも特に優れているわけではないにもかかわらず、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為です。例えば、「オーストラリア産」の牛肉を「松阪牛」と表示したり、「カシミヤ80%」のセーターを「カシミヤ100%」と表示する行為がこれにあたります。学校の広告であれば、例えば、「講師は全員が国公立大学出身者」と表示しておきながら、実際にはそうでない場合がこれにあたります。合格実績や就職率を水増しした広告も学校による優良誤認表示の典型例です。

 「有利誤認表示」(同法第5条2号)は、商品やサービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者の商品やサービスと比べて特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為です。簡単に言ってしまうと、「これは特だ」と消費者に思わせておいて実際にはそうではない表示です。例えば、通常価格なのに「50%オフ」と表示したり、実際にはそうでないのに「他社商品の2倍の内容量です」と宣伝すれば有利誤認表示です。学校の広告であれば、例えば、「月々の授業料以外一切費用はかかりません」と表示しておきながら、実際には、授業料の他に「入学金」や「施設使用料」の支払が必要であるような場合があたります。「先着30名に限り入学金免除」などと広告しておきながら実際には人数制限なく全員の入学金を免除する場合や、「今月末まで入学金免除」と広告しておきながら実際には翌月以降も免除を継続する場合なども有利誤認表示です。

 「指定公告に該当する表示」(同法第5条3号)は、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」以外で、一般消費者を誤認させるおそれがある表示として内閣総理大臣が指定したものです。現在6つの類型が指定されていますが、そのうち学校に関係するのは「おとり広告」です。例えば、回転寿司店が在庫切れのウニやカニの広告を出して集客する行為がこれにあたります。学校の広告では、例えば、実際には在籍していない教員や講師を掲載する広告がこれにあたります。

 景品表示法に違反して消費者庁から措置命令(差し止め等)や課徴金納付命令が出されると、事業者名が公表されて学校は信用を失います。また、措置命令に対する違反には罰則も用意されています(同法第36条)。広告を出稿する際の担当者は同法に違反することのないように注意が必要です。 

                                  (2023.1.19)