学校法務Q&A

クラス名簿の作成・配布に関する法的問題について

【Q】 私立の学校法人なのですが、運営する小学校で、学校行事の連絡や地震などの災害等の緊急事態に備えて氏名や連絡先を記載したクラス名簿を作成してクラスの保護者に配布したいのですが、法的な問題はあるでしょうか。

【A】 クラス名簿を配布するには、あらかじめクラス名簿に登載される学生の保護者の同意を得る必要があります。同意を得られない保護者については当該学生をクラス名簿から外して配布することになります。

【解説】

1 いわゆる個人情報保護法の適用について
 学生の氏名及び連絡先(メールアドレス、電話番号、住所等)は、特定の個人を識別できるものですので、「個人情報」(個人情報の保護に関する法律〔以下「法」といいます。〕2条1項1号)に当たります。これらを記載しているクラス名簿は、個人情報の集合体として「個人情報データベース等」(法16条1項)に当たり、クラス名簿を構成する個人情報は「個人データ」(法16条3項)に該当します。
 そして、「個人データ」を含むクラス名簿を業務上の用に供している私立学校法人は、「個人情報取扱事業者」(法16条2項)に該当します。
 個人情報取扱事業者は、個人情報の利用目的の特定(法17条1項)及び利用の制限(同2項)、個人情報の利用目的の本人通知又は公表の義務(法21条1項)や、個人データの漏えい等が発生し個人の権利利益を害するおそれが大きい場合に個人情報保護委員会への報告及び本人への通知の義務(法26条1項)等の規定を順守する必要があります。


2 第三者提供(クラス名簿の配布)について
 個人情報取扱事業者である私立学校法人は、個人データを含むクラス名簿を第三者(今回のケースではクラス学生や保護者)に提供する場合、原則として、あらかじめ本人の同意が必要です(個人情報保護法27条1項)。
 提供とは、個人データを自己以外の者が利用可能な状態に置くことをいい、紙媒体の配布、掲示板への掲示、Webサイトへのアップロード等がこれに含まれます。
 今回の質問のように小学校の場合、学生本人が未成年者のため必ずしも同意をしたことによって生ずる結果を判断できる能力を有しているとはいえないので、保護者の同意を得ておくのが適切でしょう。
保護者の同意が得られない場合には、原則として同意を得られていない学生を外して名簿を作成するしかありません。不同意が多いとクラス名簿を作ることの意味が希薄となってしまいます。クラス名簿の利用目的、配布方法、配布範囲、配布部数、回収や破棄時期等を明確にした上で、同意を得られるよう保護者を説得していくことが必要でしょう。
 クラス名簿を配布した場合、第三者提供ですので、学校から誰に対してどのようなデータを提供したのかを記録して保存する義務があります(法29条1項、同2項)。
 また、保護者の同意がない場合でも、災害等で人の生命の保護等に必要であって保護者の同意を得ることが困難であるとき等法令で定められた場合には、例外的に第三者に個人データを提供することができます(法27条1項2号)。
 なお、同窓会やPTAも、上記と同様のクラス名簿を作成及び配布する場合には、個人情報取扱事業者に該当するものと思われ、学校のケースと同様に原則として事前の保護者からの同意が必要になります。
(2023.2.3)